2012年7月24日火曜日 | ラベル:

『平成大修理見学会』の様子(6)

 





5月26日,27日に行われた『平成大修理見学会』の様子について報告いたします。
今回は屋根の造りについてです。

見学時、大玄関の屋根は板が敷き詰められておりとても美しかったです。
写真一枚目がその様子です。
屋根を支えるように格子状に組まれたところは木連格子(きづれごうし)といい、かまどからの煙を出す排気口として機能するものですが、位の高いところへの飾りつけとしての意味もあるそうです。

前回少しだけ紹介しましたが、こちらの屋根の板葺きも大工さんが薄い板を一枚づつ釘で打ってとめるそうです。
写真二枚目はそれを模型で実演してもらった様子です。
大工さんはまず木製の太めの爪楊枝みたいな釘を何本か口の中に入れました(この時点で既にびっくりしてしまいました)。
それを器用に舌で一本づつ押し出して右手で持つと、左手で押さえていた板に手で差し込んでから金槌を右手に構えてトントンと打ち込みました。
とても素早いリズムであっという間に一面の板を打ち終わってしまうので簡単そうにも見えましたが、後でやらせてもらうと木製の釘は小さくて打ちにくく、最初に真っすぐ差さないと折れたり潰れたりしてしまいました。

写真三枚目は宝福寺の鬼瓦についての展示の様子です。
上二つは頭の部分に三本の巻物を乗せたような意匠の鬼瓦で、経ノ巻と呼ばれるものです。
左の様なものが一般的だそうですが宝福寺の経ノ巻は右側のものの様に、より巻物らしい形のものが使われているようです。
写真右下は、まさに鬼の顔をあしらった鬼瓦ですが、鬼が笑った顔をしています。
これは宝福寺が建てられた室町時代の鬼瓦で、時代が古いものほど鬼は優しい表情をしているそうです。
このことから、昔の人の鬼や神仏に対する考えが、今よりもずっと身近で頼りがいのあるものだったのではないかと想像してしまいました。

写真四枚目は屋根の端を支える木材、垂木の模型です。
木材が互いに支え合って構造を組み上げていることがわかります。
模型の左半分が垂木が放射状に広がる扇垂木で、天秤の様な長い屋根を支えることができる丈夫で美しい構造だそうです。
右半分が垂木を平行に並べて組む平行垂木です。仏教建築の技法がもたらされるまでの日本古来の建築様式に使われていたそうです。
禅宗の建物では扇垂木が好んで使われるようです。他にも地垂木、飛櫓垂木といったものが展示されていました。

見学会を通して、木造建築物への理解とともに宝福寺の歴史と直に触れて再発見することができました。
『平成大修理見学会』の展示内容は今回が最後になりますが、次回見学会レポートは見学会で行われていた体験コーナーについての報告を予定しています。



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ここで毎年8月恒例の暁天座禅会のご案内です。
8月の座禅会は1日から5日までの五日間、早朝から朝日が昇るまでの時間行われます。
当日の受付で参加が可能ですので、興味のある方はこの機会に行ってみるとよいのではないでしょうか。
私どもも参加させていただく予定です。


日  時:2012年8月1日(水)〜8月5日(日)
受付時刻:午前4時30分から(出席表にご記入ください)
内  容:座禅(午前5時〜午前7時)、法話、梅湯茶礼。
会  費:一日500円
そ  の  他:井山宝福寺へ宿泊希望の方は、7月25日(水)までに直接宝福寺へ電話で御申し込みください。宿泊の方は午後8時までに入山とのことです。消灯は午後9時だそうです。

--光森雅明 / 岡山県立大学大学院 デザイン学研究科1年