2012年7月31日火曜日 | ラベル:

『平成大修理見学会』の様子(7)








5月26日,27日に行われた『平成大修理見学会』の様子について報告いたします。
今回は見学会で行われていた体験コーナーについての報告です。

以前少しだけ紹介しましたが、献瓦(けんが)コーナーではこれから実際に使用される瓦に自分の名前を残すことができました。
写真一枚目はその献瓦コーナーの様子です。
写真二枚目は宝福寺の副住職が献金していただいた方のお名前を揮毫なされていました。
このように達筆で記していただくこともできるのですが、その場にいれば自分で書くこともできます。
私も書かせていただきました。
拙い字ですが、これが見学した江戸時代の大工さんの記録のように、後の世で発見されるかもしれないと考えると、遠い未来に思いを馳せることができました。

写真三枚目は槍鉋(やりがんな)体験コーナーの様子です。
名前の通り槍のような形をした鉋で、大きな木材を削る体験をすることができます。
初めて触る道具で一面を平行に削りだしていくのはなかなかに難しかったのですが、大工の方に丁寧に教えていただいたので少しは上達することができたと思います。
しかし、このような道具で完璧に仕上げてしまう大工さんの腕の凄さを改めて感じました。
削った木材はヒノキで、削りカスからはとても良い香りがしました。


瓦を自分で作ることができる体験コーナーもありました。
写真三枚目は丸瓦の紋の部分をつくるための型です。
写真五枚目のように、ここではまず瓦にする粘土をよくこねて一つの塊にします。
そうしたら先ほどの型に隙間無く押し込み、余った部分を糸で削り取ります。
型は四つのパーツに分かれていて、このおかげでひっくり返すと粘土からきれいに取り出すことができるようになっています。
あとはある程度乾燥させればできあがりです。
体験コーナーでは実際に瓦を焼いてもらうこともできたのですが、私はその日に持って帰ることにしました。

平成大修理見学会の報告は以上となります。
長々と書き連ねてしまいましたが、その日のことを思い出すきっかけや記録、参加されなかった方への紹介になれば幸いです。

————————————————————————————————————————————————————————————————————————————————————


ここで改めて、いよいよ明日からとなります毎年8月恒例の暁天座禅会のご案内です。
8月の座禅会は1日から5日までの五日間、早朝から朝日が昇るまでの時間行われます。
当日の受付で参加が可能ですので、興味のある方はこの機会に行ってみるとよいのではないでしょうか。

時:2012年8月1日(水)〜8月5日(日)
受付時刻:午前4時30分から(出席表にご記入ください)
容:座禅(午前5時〜午前7時)、法話、梅湯茶礼。
費:一日500円
そ の  他:宿泊申し込みは7月25日(水)に締め切られました。ご理解ください。

--光森雅明 / 岡山県立大学大学院 デザイン学研究科1年

2012年7月24日火曜日 | ラベル:

『平成大修理見学会』の様子(6)

 





5月26日,27日に行われた『平成大修理見学会』の様子について報告いたします。
今回は屋根の造りについてです。

見学時、大玄関の屋根は板が敷き詰められておりとても美しかったです。
写真一枚目がその様子です。
屋根を支えるように格子状に組まれたところは木連格子(きづれごうし)といい、かまどからの煙を出す排気口として機能するものですが、位の高いところへの飾りつけとしての意味もあるそうです。

前回少しだけ紹介しましたが、こちらの屋根の板葺きも大工さんが薄い板を一枚づつ釘で打ってとめるそうです。
写真二枚目はそれを模型で実演してもらった様子です。
大工さんはまず木製の太めの爪楊枝みたいな釘を何本か口の中に入れました(この時点で既にびっくりしてしまいました)。
それを器用に舌で一本づつ押し出して右手で持つと、左手で押さえていた板に手で差し込んでから金槌を右手に構えてトントンと打ち込みました。
とても素早いリズムであっという間に一面の板を打ち終わってしまうので簡単そうにも見えましたが、後でやらせてもらうと木製の釘は小さくて打ちにくく、最初に真っすぐ差さないと折れたり潰れたりしてしまいました。

写真三枚目は宝福寺の鬼瓦についての展示の様子です。
上二つは頭の部分に三本の巻物を乗せたような意匠の鬼瓦で、経ノ巻と呼ばれるものです。
左の様なものが一般的だそうですが宝福寺の経ノ巻は右側のものの様に、より巻物らしい形のものが使われているようです。
写真右下は、まさに鬼の顔をあしらった鬼瓦ですが、鬼が笑った顔をしています。
これは宝福寺が建てられた室町時代の鬼瓦で、時代が古いものほど鬼は優しい表情をしているそうです。
このことから、昔の人の鬼や神仏に対する考えが、今よりもずっと身近で頼りがいのあるものだったのではないかと想像してしまいました。

写真四枚目は屋根の端を支える木材、垂木の模型です。
木材が互いに支え合って構造を組み上げていることがわかります。
模型の左半分が垂木が放射状に広がる扇垂木で、天秤の様な長い屋根を支えることができる丈夫で美しい構造だそうです。
右半分が垂木を平行に並べて組む平行垂木です。仏教建築の技法がもたらされるまでの日本古来の建築様式に使われていたそうです。
禅宗の建物では扇垂木が好んで使われるようです。他にも地垂木、飛櫓垂木といったものが展示されていました。

見学会を通して、木造建築物への理解とともに宝福寺の歴史と直に触れて再発見することができました。
『平成大修理見学会』の展示内容は今回が最後になりますが、次回見学会レポートは見学会で行われていた体験コーナーについての報告を予定しています。



————————————————————————————————————————————————————————————————————————————————————


ここで毎年8月恒例の暁天座禅会のご案内です。
8月の座禅会は1日から5日までの五日間、早朝から朝日が昇るまでの時間行われます。
当日の受付で参加が可能ですので、興味のある方はこの機会に行ってみるとよいのではないでしょうか。
私どもも参加させていただく予定です。


日  時:2012年8月1日(水)〜8月5日(日)
受付時刻:午前4時30分から(出席表にご記入ください)
内  容:座禅(午前5時〜午前7時)、法話、梅湯茶礼。
会  費:一日500円
そ  の  他:井山宝福寺へ宿泊希望の方は、7月25日(水)までに直接宝福寺へ電話で御申し込みください。宿泊の方は午後8時までに入山とのことです。消灯は午後9時だそうです。

--光森雅明 / 岡山県立大学大学院 デザイン学研究科1年

2012年7月10日火曜日 | ラベル:

7月の座禅会の様子



7月8日に毎月の定例座禅会が行われました。

じめじめと蒸し暑い時期になりましたが、当日の朝は涼しくからっとした良い陽気の中で座禅をすることができました。

座禅の後、住職さんが法話では悟りとはどういうことかといった基本的なことと、白隠禅師の厳しい修行のことについてお話しになられました。
水は形が無い故に自由に形をかえることができるというお話には、無心という言葉の本当の意味に気付かされたように思います。

今回は50名以上の方が参加しており、茶礼も方丈を使って行われました。
また、当日はたまたま平成大修理の見学が可能となっており、私ももう一度見学させてもらいました。
工事も順調にすすんでおり、以前とは変わって屋根一面に新しい瓦と200年前の瓦が分けて葺かれ、その様子はとてもきれいでした。

--光森雅明 / 岡山県立大学大学院 デザイン学研究科1年

2012年7月3日火曜日 | ラベル:

『平成大修理見学会』の様子(5)




今回も5月26日,27日に行われた『平成大修理見学会』の様子について報告いたします。
今回は建物の瓦葺き屋根についてです。


屋根の上にはまずとち葺きという、太めのサワラの板(とち板)を組み並べることから行われます。
その上から土居葺きといって、杉や栗の木で作られた薄い板を丁寧に釘で打って並べます。
この屋根全てに板を並べるのですから、それだけで大変な作業です。ひたすら釘を打っていくその様子から土居葺きは別名トントン葺きとも呼ばれるそうです。
屋根の上は以前は土葺きという土を乗せた上から瓦を敷き詰める工法をされていたそうですが
その工法では建物の柱にかかる重みが大きすぎるということが今回の改修でわかったので、瓦のみを敷き詰めることで屋根を仕上げます。それを本瓦葺き工法といい、一カ所に瓦が三枚重なるように敷き並べることで、雨漏りなどを防ぎます。


以前の瓦は200年前に香川の丸亀で焼かれたものであることが、瓦に付けられている刻印を調べることで判明しました。3種類あり、それぞれ三木屋、九鬼屋、白木屋という3つの瓦屋が協同して宝福寺に納めたものであることが分かりました。
これだけの瓦を遠い四国からどのように運んできたのかを考えると、想像が膨らみます。
瓦はすべて新しいステンレスの釘を使って留めていきます。以前までの鉄の釘では、熱で膨張して瓦を割ってしまうことがあるからです。
以前の瓦はすべて一度状態をチェックして、使えるものも一枚一枚瓦のたわみを測定し、新しく重なり合う瓦はできるだけその曲がり具合が近しいものを使うようにします。およそ3分の1くらいは以前までの瓦を再利用するそうです。


大工さんには他にも屋根の頭頂部には青海波組棟(せいかいはくみむね)という美しい装飾がされていたことなど、屋根のことや瓦について詳しく説明していただきました。


--光森雅明 / 岡山県立大学大学院 デザイン学研究科1年