2013年5月21日火曜日 | ラベル:

屋外美術展の様子



先日5月19日(日)から、総社芸術祭が始まりました。井山宝福寺では26日(日)まで屋外美術展が行われています。

今回は19日(日)に行われたアーティスト・トークの様子について報告します。

当日はあいにくの天気になりましたが、今回のトークイベントのために作家さんが集まりました。屋外美術展実行委員会で彫刻家の平田敦司さんが司会を務められ、作家さんごとに順に作品紹介を行っていただきました。数多くの作品を発表されてきた作家さんのお話を、作品の前で聞くというのは自分には得難い経験でとても嬉しく思いました。



『三重卓』は彫刻家の久保極さんの作品です。
脚が密接に組み上げられた石のテーブルの上には、芸術祭のテーマでもある「赤と黒」の模様が石で表されています。
岡山の石で作られた作品で、宝福寺の苔や紅葉の緑とも合うとお話ししてくださいました。



『雪舟の一筆』はシルクスクリーン作家の伊永和弘さんの作品です。
雪舟の水墨画「秋冬山水図・冬景」の中で天からおりてくる山のような線を、自然の木を使って見立てた大きな作品です。
バーナーで黒く焦がした後、サンドペーパーで先端を白くするなど、均一すぎないようなこだわりもお話しくださいました。



『1/2 温羅』は彫刻家の西平孝史さんの作品です。
吉備における大和の国と戦ったヒーローとして、横綱白鵬をモデルに温羅(鬼)が表現なされています。
誇張と省略がなされた大胆な見た目で、力強さ、頼もしさを感じます。
こちらの作品は触ることができますので、ハグしたり自分の手足と比べたりして作品との対話を試みてくださいと、西平さんからお話しいただけました。



『井山宝福寺ニュータウン』、『井山宝福寺にて』と名付けられたのは、彫刻家の尾崎公彦さんの作品です。
『井山宝福寺ニュータウン』は、クスノキを彫って家のようにしたものを住宅街を模して並べられた作品です。
木で造られているので同じ形でも一つ一つが異なるところも、人間の生活を表されているということです。
『井山宝福寺にて』は、祈る人の手の形をイメージしてつくられた作品です。
東日本大震災の際に彫刻家として思うことを形にしたとお話くださいました。



『石層−赤の起源』は彫刻家の岩村俊秀さんの作品です。
大阪府能勢町の黒御影石でつくられた作品は、文化の起こる特別な場所のもつ力と、石のエネルギーを表されています。
細い石に支えられているような大きな岩ですが、砂に隠れた部分で自立しているようです。それでも1t以上の重さがあり、今回は大阪のアトリエからユニック車で作品を運ばれたとのことです。



『呼吸譚 2012−水景−』は、彫刻家の平田敦司さんの作品です。
鉄でつくられた蓮の花と鉄パイプをつなぎ合わせた造形物が、池の中から溢れ出ており、蓮の生命力を表されています。
鉄は行程を重ねて錆びさせていることで、鉄本来の姿を感じることができます。



『モンスター』はからくり作家の糸日谷晃さんの作品です。
作品に触れてハンドルを回してみると、赤い炎のような部分が揺れ動きます。
芸術祭の「赤と黒」を、ペンキで塗ることで工作らしさを表されたとお話しいただきました。
お話の中で“工作”という言葉を何度も繰り返され、彫刻でも絵画でもない工作への思いを感じました。



『転位』は金属工芸作家の井内誠一さんの作品です。
丸いジャングルジムのような形の鉄柵の中に、丸い玉と赤い花が浮かび上がっているように吊られています。
地球の平和をイメージした作品で、今回初めて鉄に色を付けたとのことです。



『経過』は彫刻家の伊丹脩さんの作品です。
伊丹さんは倉敷芸術科学大学の一期生で、枝豆をイメージした作品を今回以外にも幾つか発表されています。
石をくりぬいて磨いたものを、その上にのせることで形どられています。
三重塔の前の石段のように、足跡のある石が参拝に赴くように並べられています。
作品が周囲にとけ込むような木の密集した空間を選んだと、お話いただきました。




今回アーティスト・トークに来られた作家さんは以上になりますが、今回都合により来られなかった作品も、実行委員会の平田さんより紹介していただきました。
このように多くの作品たちが宝福寺を彩っています。まだお越しでない方は、ぜひ一度宝福寺を訪れてみてください。

イベント終了後も何人かの作家さんとお話しさせていただくことができました。貴重な時間をいただきましたが、どなたも快くお話してくださり、自分にとって大変助けになりました。
この場を借りて感謝の意を表します。本当にありがとうございました。

--光森雅明 / 岡山県立大学大学院 デザイン学研究科2年